
学校検診のプリントを前に、相談のタイミングで迷っていませんか
小学2年生のお子さんが「かみ合わせ・歯並び」の指摘を受けて帰宅すると、今すぐ動くべきか、永久歯が揃うまで待つべきか、判断材料が足りず戸惑うものです。この記事では一期治療と二期治療の対象年齢・目的・使う装置の違いを整理し、指摘内容ごとの相談時期の目安までたどれるようにまとめました。
この記事の要点まとめ
- 一期治療は6〜11歳頃の顎の成長を促す土台作り、二期治療は永久歯の歯並びを整える処置です。
- 検診での指摘は直ちに治療開始を意味するものではなく、現状確認や相談の目安となります。
- 一期治療で終了する場合もあれば二期へ進む場合もあるため、状況に応じた確認が大切です。
一期治療と二期治療、対象年齢と目的の違い

小児矯正は、大きく二つの段階に分けて語られます。名前だけ聞くと「一期のあとに必ず二期がある」と受け取られがちですが、それぞれの狙う場所が違うため、まずは役割を分けて理解しておくと判断がぶれにくくなります。
一期治療の対象年齢と目的(乳歯と永久歯が混在する時期)
一期治療は、乳歯と永久歯が混ざって並ぶ混合歯列期、おおよそ6〜11歳ごろを対象とします。狙いは歯を一本ずつ並べることではなく、顎の骨の成長する力を使って、永久歯が生えてくる土台そのものを整えること。上顎の幅が足りていない場合に横方向の成長を促す、前後のずれを和らげる、といった骨格へのはたらきかけが中心になります。永久歯が並ぶスペースを確保しておく意味合いも含まれます1。
二期治療の対象年齢と目的(永久歯が生え揃った後)
二期治療は永久歯列期、おおむね12歳前後以降が対象です。ここでは一本ずつの歯の位置や角度、上下のかみ合わせを細かく整える段階に入ります。骨格の成長が落ち着いた後なので、土台を動かすのではなく、揃った永久歯をどう配置するかが主題になります。中学生から始める方も、高校生や成人になってから取りかかる方もいて、開始年齢の幅は広めです。
使用する装置の違い(拡大床やマウスピース型装置とワイヤー矯正)
一期治療では、顎の幅を広げる拡大床や、口周りの筋肉のバランスにはたらきかける小児用マウスピース型装置(プレオルソ、ムーシールドなど)が用いられます。取り外しできるタイプが多く、装着時間を家庭で管理する前提の装置です。一方の二期治療は、ブラケットとワイヤーを使うマルチブラケット装置や、マウスピース型矯正が主軸。つまり一期は「骨格と環境」、二期は「歯そのもの」へのアプローチという区分けです。
なお、いずれの段階の装置も自費診療(公的医療保険の適用外)となる場合が多く、次のような負担やリスクが生じ得ます。利点とあわせて、始める前に説明を受けておきたい内容です2。
装置を使うときに起こりうる主なリスク・副作用
- 装置を入れた直後や調整の後に、歯が浮くような痛み、噛みにくさ、締めつけられる感じが数日ほど続くことがあります。
- 装置のふちが唇や頬の内側、舌に当たり、粘膜の傷や口内炎ができることがあります。
- 装置の周りに汚れが残りやすくなるため、むし歯や歯ぐきの炎症(歯肉炎)が起こりやすくなります。
- 一時的に発音しにくさ、話しにくさ、唾液の量の変化を感じることがあります。
- 歯を動かす過程で、歯の根が短くなる(歯根吸収)、歯ぐきが下がる、歯がしみるといったことが起こる場合があります。
- 装置の材料により、まれに金属アレルギーなどの反応が出ることがあります。
- 治療後に歯が元の位置へ戻ろうとする後戻りが起こることがあり、保定装置の使用が必要になります。
- 取り外し式の装置は、決められた装着時間が守れないと計画どおりに進まず、期間が延びたり方針の見直しが必要になったりすることがあります。
- 成長の進み方や生え変わりの状況によって、当初の見通しどおりの結果にならない場合があります。
学校検診の指摘内容別、相談時期の目安
検診のプリントは、症状名まで書かれている場合とそうでない場合があります。書かれている内容によって、急ぎ方の目安は変わってきます。
受け口・交叉咬合を指摘された場合の考え方
下の歯が上より前に出ている受け口(反対咬合)や、奥歯のかみ合わせが左右でずれる交叉咬合は、顎の成長方向と関わるため、混合歯列期のうちに一度診てもらう意義が指摘されている領域です。とくに顎を横にずらして噛む癖を伴う片側性の交叉咬合については、6〜12歳の時期に介入した研究の検討がまとめられており、早めの相談が検討されやすいタイプにあたります3。左右の顔の使い方に偏りがあるようなら、学年を待たずに相談して構いません。
出っ歯・叢生(歯の重なり)を指摘された場合の考え方
前歯が前方に傾いている、あるいは歯が重なってでこぼこしている叢生の場合、背景にはスペースの不足があることが多いです。この場合は「今すぐ装置をつける」ではなく、生え変わりの進み方を数か月から半年ごとに見ながら判断していく流れが一般的。ただし、八重歯になる犬歯が骨の中で内側に寄っているようなケースでは、上顎の幅を広げる処置が並び方に影響するかを扱った検討もあり、レントゲンで位置を確認しておく価値はあります4。
「かみ合わせ」とだけ書かれたプリントの読み取り方
症状名がなく「かみ合わせ」「歯列」に丸がついているだけ、というのもよくあるパターンです。検診は短時間で多人数を診るため、詳細は診察の場に委ねられます。家庭では、奥歯を軽く噛んだとき上下の前歯が触れているか、真ん中の線が上下でずれていないか、食べるときに口が開いたままになっていないかを見てみてください。気になる点が一つでもあれば、治療を始める前提ではなく「現状の確認」として相談すれば十分です。
一期治療についてのよくある誤解と判断基準
「一期治療は早く始めたほうがいい」という話は伝わりやすい反面、抜け落ちる情報も多くあります。ここを整理しておくと、一般論として語られる話と自分の子の状態とを切り分けて考えられます。
「早く始めるほど良い」は誤解?一期治療の効果が及ぶ範囲
一期治療がはたらくのは、顎の成長と口周りの環境という範囲です。歯の一本ごとの向きや細かな重なりまで、この段階で仕上げきれるわけではありません。また、年齢が早いほど成果が大きくなると一律に言えるものでもなく、治療の反応は骨格のタイプや癖の有無によって変わります。開始が早い分だけ通院期間も長くなるため、始める時期は「何を目的に、どの成長を使うのか」から逆算して決めるという考え方が現実的です1。
一期治療だけで終わるケースと二期治療に進むケースの分かれ目
一期で土台が整い、永久歯が無理なく並んだ結果、経過観察のみで区切りとなるお子さんもいます。一方で、永久歯の大きさと顎のサイズの差が大きい、上下の骨格のずれが残る、生えてこない歯があるといった場合は、永久歯列期に改めて調整する流れになりやすい。犬歯の萌出をめぐる複数の処置法を比較した検討でも、方法によって結果に差が出ることが示されており、一期の段階で将来を完全に見通すのは難しいのが実情です5。開始時に「二期に進む可能性」まで説明を受けておくと、後の見通しが立てやすくなります。
あえて二期治療から始めるという選択肢の考え方
永久歯が揃うまで待ち、二期治療から取りかかる進め方もあります。装置をつける期間が一度で済み、子ども本人が自分で必要性を理解したうえで管理できる点は利点。ただし顎の成長を使えないため、骨格のずれが大きい場合は対応の幅が狭まり、抜歯を含めた検討が必要になることもあります。どちらが向くかは検診の指摘内容次第なので、比較のうえで選ぶのが現実的な進め方です2。
費用の考え方と豊田市で相談先を選ぶときの視点

通い始めてから「思っていた仕組みと違った」となりやすいのが、費用と通院頻度です。相談の段階で確認しておきたい点を挙げます。
一期治療・二期治療の費用の考え方とトータルフィー制度
小児矯正は自由診療(公的医療保険が適用されない)が基本で、一期治療はおおむね20万〜50万円程度、二期治療はおおむね30万〜80万円程度が、複数の医療機関で目安として案内されることがあるとされています。なお、これらは一般的な相場であり当院の費用ではありません。当院の費用は診察のうえでご案内します。一期から二期へ移る際、差額のみを加算する総額制(トータルフィー制度)を採る医院と、段階ごとに別契約とする医院があり、仕組みで総額が変わります。装置代・調整料・保定装置の費用がどこまで含まれるかも合わせて確認してください。
医療費控除の対象になる条件
子どもの矯正は、発育途上のかみ合わせを整える目的と判断される場合、医療費控除の対象となり得ます。見た目を整えることが主目的と見なされる場合は対象外となるため、診断内容の記載された領収書や診断書を保管しておくのが安全です。通院時の公共交通費も対象に含められる場合があります。判断は税務署の確認が前提となるため、申告前に必要書類を問い合わせておくと手戻りがありません2。
豊田市で共働き家庭が通いやすい医院を選ぶ視点
一期治療では、月1回前後の通院が数年にわたることがあります。豊田市で働きながら通う場合、平日夕方や土曜の枠が取れるか、兄弟の予約をまとめられるか、駐車場があるかは実務的な判断材料です。急な発熱で休んだ際の振り替え方法も聞いておくと安心。当院では、休診中も予約や歯の相談についてLINEやメールで確認次第お返事する体制をとっており、連絡手段の選択肢も通いやすさに関わります。
よくある質問
Q. 学校検診で指摘されたら、すぐに治療を始めることになりますか?
A. 指摘は「一度診てもらってください」という案内で、治療開始の決定ではありません。相談の場では現状の確認と、生え変わりの経過を見るかどうかの判断が中心になります。
Q. 小児矯正に保険は使えますか?
A. 原則は自由診療で、公的医療保険の適用外です。ただし顎の骨格に関わる特定の疾患や、国が定める先天性疾患に該当する場合など、限られた条件では保険適用となることがあります。該当するかは診察での確認が必要です。
Q. 装置をつけると給食や歯磨きに支障が出ませんか?
A. 一期治療で使う装置は取り外せるタイプが多く、食事の際は外して保管する運用が一般的です。装置の周りは汚れが残りやすくなるため、磨き方の練習を含めて指導を受けておくと負担を減らせます。慣れるまで話しにくさや違和感が出ることもあります。
Q. 「吹き戻し」などの遊びは何歳から取り入れられますか?
A. 息を吐く力や口を閉じる力を使う遊びは、指示を理解して自分で口にくわえられるようになった時期から取り入れられることがあります。誤って飲み込む心配があるため、必ず大人が見ている場面で行い、開始時期は成長の様子に合わせて相談してください。
Q. 一期治療をした場合、二期治療は必ず必要になりますか?
A. 必ずではありません。経過観察で区切りとなる場合もありますし、永久歯の並び方や骨格のバランス次第で二期に進む場合もあります。開始前に両方の可能性を確認しておくと見通しが立ちます。
参考文献
1. 公益財団法人 日本医療機能評価機構「Minds ガイドラインライブラリ」 https://minds.jcqhc.or.jp/
2. 厚生労働省「健康づくりサポートネット(疾病・健康に関する情報)」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/
3. Alsawaf DH, Almaasarani SG, Hajeer MY et al. The effectiveness of the early orthodontic correction of functional unilateral posterior crossbite in the mixed dentition period: a systematic review and meta-analysis. Progress in Orthodontics. 2022. PMID: 35156156 / DOI: 10.1186/s40510-022-00398-4
4. J M, Peter E, George SA. How effective is maxillary expansion as an interceptive treatment in individuals with palatally displaced canines? A systematic review and meta-analysis. Journal of the World Federation of Orthodontists. 2022. PMID: 35288033 / DOI: 10.1016/j.ejwf.2022.01.004
5. Araujo VZ, Heckmann S, Araujo FB et al. Is there a better interceptive treatment for unerupted palatally displaced canines? A network meta-analysis. Brazilian Oral Research. 2023. PMID: 36651386 / DOI: 10.1590/1807-3107bor-2022.vol36.0119
2011年 愛知学院大学歯学部附属病院 総合診療科
2012年 名古屋市内歯科医院 勤務
2018年 つづき歯科医院 常勤
2019年 つづき歯科 開業
・日本ヘルスケア歯科学会
・JSPP(全国小児歯科開業医会)
・公益社団法人日本糖尿病協会
・日本小児矯正研究会
・日本顕微鏡歯科学会
・日本口育協会
【資格】
・インビザラインドクター
・日本糖尿病協会登録歯科医
・口育士
