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口腔機能の発達不足と歯並びの関係を知り家庭で見直したい習慣

2026年11月6日
口腔機能の発達不足と歯並びの関係を知り家庭で見直したい習慣

歯並びと口の使い方は、家庭の工夫と歯科への相談で整理する


お口の働きが育ちきっていないこと(食べる・話す・息をする力がじゅうぶんに育っていない状態)は、あごの育ちや歯にかかる力を通して歯並びにかかわることがあります。ただし、親から受けつぐあごのかたちなど、ほかの理由も重なります。この記事では、お茶で流し込む食べ方や口で息をするくせなど、家で気づけるサインをまとめます。子どもを注意せずに続けられる食卓の工夫や、生え替わりのころに歯科や耳鼻咽喉科へ相談する目安もまとめます。


この記事の要点まとめ


  • 口の使い方や食べるときのくせは歯並びにかかわることがありますが、親から受けつぐあごのかたちなどもかかわります。
  • いつも口で息をしている、食事中に飲み物で流し込むなどの様子を見て、気になるときは歯科へ相談しましょう。
  • 食べ物やすわり方、飲み物の出し方を家族で工夫し、必要なときは歯科や耳鼻咽喉科で相談できます。

口腔機能の発達不足は、歯並びや顎の成長にどう関わるの?

口腔機能の発達不足は、歯並びや顎の成長にどう関わるの?

噛む・飲み込む・舌や唇を使う・呼吸するといった日常の働きは、顎の発育や歯にかかる力を通じて歯並びへ影響する可能性があります。ただし、これらだけで歯並びが決まるわけではなく、骨格や歯の大きさなども影響します。


小児期には、食べる・話すなどの働きが十分に育っていない状態を「口腔機能発達不全症」と呼ぶことがあります。噛み合わせの乱れ(不正咬合)は、飲み込み方のくせや、舌が低い位置にあること、口呼吸などとつながりがあるとされています。ただし、くわしい仕組みはまだはっきりしていません。


噛むこと・顎の成長・歯が生えるスペースのつながり


当院では、噛むことが顎の骨の成長を促し、それが正しい位置に歯が生えるスペースの確保につながり、歯並びへ影響するという順で説明しています。よく噛めば必ず歯並びが整うと言い切れるものではありませんが、顎へ刺激を送る習慣は発育を考えるうえで土台になります。


また、噛む動作には唾液の分泌を促す働きもあります。唾液が増えると、口の中の汚れや細菌が洗い流されやすくなり、むし歯を防ぐ助けにもなります1。


舌や唇の使い方、飲み込み方、口呼吸と歯並びの関係


歯は、内側から押す「舌の力」と、外側から支える「唇や頬の筋肉(口輪筋など)の力」が釣り合う位置に並びます。普段から口が開いて口呼吸になっていたり、舌が低い位置にあったりすると、この力のバランスが崩れやすくなります23。


さらに、舌で前歯を押す飲み込み方や長く続く指しゃぶりは、上下の前歯が噛み合わない状態(開咬)と関わることがあります。早めの矯正や口まわりの筋肉の訓練が、開咬や口呼吸、飲み込み方、舌の位置にどう働くかも調べられています2。ただし根拠の質には限りがあるため、お子さんごとの状態を見極める必要があります。


遺伝や顎の大きさなど、家庭の習慣以外の要因もある


歯並びの成り立ちには、親から受け継ぐ顎の骨格や、歯そのものの大きさ・本数、生え替わりの時期といった遺伝的・体質的な要因も大きく関わります。ご家族から「父親も昔は同じような歯並びだった」と言われる場合、そうした骨格の特徴が当てはまっていることもあります。


そのため、「歯並びが乱れているのは育て方のせい」と親御さんがご自身を責める必要はありません。当院では、歯並びの原因には遺伝や骨格なども関わるため一概にご家庭の習慣だけが原因ではないとお伝えしたうえで、習慣が重なるとリスクになるため一度見直していくことをご提案しています。


ポイント

歯並びのなりたちには、親から受けつぐあごのかたちと、口の使い方や食べるときのくせの両方がかかわります。育て方のせいとかかえこまず、ふだんの暮らしで見直せるくせから目を向けていきましょう。


家庭で気づけるサインと、歯科に相談したい目安は?


いつも口が開いている、食事をお茶で流し込む、肉など噛みごたえのある物を避けるといった様子は、お口の働きを確かめるサインになります。ただし、家庭での観察だけで原因を決めつけず、生え替わりの段階も含めてお口全体を歯科医院で診てもらうことが大切です。


お茶で流し込む・いつも口が開いているなど、食事や普段の様子に表れるサイン


家庭で無理なく観察できるサインとして、食事中と普段の姿を分けて見ておくと整理しやすくなります。


  • 食事中の様子:一口ごとに水やお茶で流し込む、片側だけで噛む、食べるのが極端に遅い・または丸飲みに近い、口を閉じて噛みにくそうにする
  • 普段の様子:テレビを見ているときや園の写真でいつも口が開いている、唇が乾きやすい、サ行やタ行などの発音が気になる3

口呼吸が習慣になると舌の位置が下がりやすく、上あごが育ちにくくなることがあります。その結果、出っ歯や、歯がでこぼこに生える原因になることがあります4。


生え替わり期に歯科へ相談したい変化


6歳前後の生え替わりの時期には、上の永久歯の前歯のあいだに一時的なすき間が出たり、下の前歯が乳歯の内側から生えてきたりするなど、成長にともなう自然な変化もあります。一方で、次のような様子が見られるときは歯科医院への相談を考えてみてください。


  • 乳歯が抜けないうちに、永久歯が後ろや横から重なって生えてきた
  • 生えてきた永久歯が大きく傾いている、またはねじれている
  • 奥歯で噛んだときに上下の前歯が噛み合わない、または下の歯が上の歯より前に出ている(受け口ぎみ)

「まだ生え替わりの途中だから見守ってよいか迷う」という段階でも、顎のスペースが足りているかを確認するきっかけになります。


鼻詰まりで口が開く場合は、耳鼻咽喉科への相談も考える


夜に口を開けて眠っていたり、いびきをかいたりしている場合、癖ではなくアレルギー性鼻炎などの鼻詰まりで鼻呼吸が苦しくなっていることがあります。鼻が詰まっているのに「口を閉じなさい」と促すと、お子さんにとって息苦しく負担になってしまいます。


当院では、鼻の疾患が疑われる場合はまず耳鼻咽喉科でご相談いただくようお伝えし、必要があれば紹介状もお書きしています。鼻の通りに問題がないのに口が開いてしまう場合は、唇や舌の使い方の観点から歯科医院で相談するという分け方が目安になります。


歯並びだけで判断せず、お口全体の状態から考える


当院では、いまあるむし歯や見えている歯並びだけで決めず、お口の中ぜんたいを調べ、いまの困りごと・よくできる点・予防について、いろいろな方向からご説明・ご提案しています。また、飲み物で流し込むお子さんのご相談では、ふだんの食事の机やいすなどのまわりの様子、食卓に出ている料理や飲み物の出し方なども最初にうかがっています。


家庭で気づいたサインは、「何が原因か」を親御さんが特定するためではなく、受診時に歯科医師へ伝える手がかりとしてメモしておくと診察がスムーズに進みます。


「よく噛みなさい」と注意する前に、家族で何を見直せばいい?


子どもへの「よく噛みなさい」という注意を増やすより、食事の楽しさを保ちながら食材や調理方法、食卓の環境を見直すほうが無理なく続けられます。忙しい平日に食べやすい献立を選ぶ日があっても構いませんので、できる工夫から少しずつ取り入れていきましょう。


食べ方を責めず、食事を楽しめる習慣を家族で考える


当院では、歯の役割、食べることや噛むことの大切さを知り、食事を楽しみながら食習慣を整え、子どもの成長を支えることを大切にしています。食事のたびに噛む回数を強く注意すると、お子さんが食事そのものを苦痛に感じたり、ご家族の間で食卓の雰囲気が重くなったりして続きにくくなります。


まずは「楽しく味わって食べる時間」を守ることをご家族の共通認識にし、食べ方を責めない姿勢から始めることが土台になります。


噛む回数の注意だけでなく、食材と調理方法を見直す


当院では、食事ではよく噛むことを意識していただきつつ、噛みごたえのある食材の活用や調理方法の工夫で習慣づけるようお勧めしています。お肉などを噛みにくくて避けるお子さんには、最初から硬い食材を出すのではなく、手羽元などの骨付き肉のように「大きくて前歯でかじり取れる食材」をご提案しています。前歯でかじり取る動作が、奥歯で噛むためのスイッチになるためです。


このほか、根菜や野菜の切り方をいつもより少し大きくする、加熱しすぎず食感を残すといった工夫も、自然と噛む回数を増やす助けになります。お子さんの年齢や生え替わりの状態に合う硬さ・大きさは、歯科医院でも確認できます。


家族で共有しやすい声かけと食卓の工夫


共働きや交替勤務などで、平日の夕食をおばあちゃんやパートナーに任せる日がある場合、細かいルールは共有しにくくなります。誰が食卓を担当してもそろえやすいよう、次のような小さな約束に絞るのが現実的です。


  • 飲み物の出し方:食事の最初からコップを置かず、汁物を添えるか、水やお茶は食事の最初か最後に出すようにする
  • 座る姿勢の確認:足の裏が床や足置き台にしっかりつくよう椅子を調整し、噛む力を入れやすくする
  • 声かけの工夫:「〇回噛んで」ではなく、「パリパリって音がするね」「どんな味がする?」と食感に目を向ける声かけにする

ご家族のやり方を否定せず、「歯が生え替わる時期だから、お茶は食後に出してみよう」と目的を共有すると協力しやすくなります。


ポイント

子どもの努力に頼るより、「前歯でかじり取る大きさにする」「飲み物は食後に出す」など、食卓の環境を家族でそろえるほうが習慣になりやすくなります。


家庭だけで判断に迷うとき、歯科ではどう相談を進めるの?


家庭での工夫だけで様子を見るか迷う場合は、気になる様子を整理して歯科医院に伝え、お口全体の状態と食生活を確認したうえで個々に合う進め方を一緒に考えます。相談したからといって、その場ですぐに訓練や矯正治療が始まるわけではありません。


家庭だけで悩まず、栄養士による食事指導も活用する


当院では、予防の一環として栄養士による食事指導を行い、治療後の支援やセルフケア指導と合わせて、一人ひとりに合った指導を進めています。親御さんがお子さんの食事について困っている場合は、口腔機能の観点からは歯科医師と歯科衛生士が関わり、栄養面や献立などの課題は栄養士・管理栄養士へ共有して連携する体制をとっています。


「どんな食材なら噛んでくれるか分からない」「家族で無理なく続けられる献立を知りたい」といった段階でも、家庭だけで抱え込まずにご相談いただけます。


歯並びと食べ方の気がかりを、初診の相談で伝える


当院では、初診時は治療前にカウンセリングルームでお話を聴き、治療内容を説明し、十分な納得を得てから治療を開始する体制をとっています。豊田市で暮らし、お仕事やご家庭の予定をやりくりしながら受診される親御さんにとっても、気になる点を最初にまとめて伝えられる時間があると見通しを立てやすくなります。


受診の際は、普段の口元の様子がわかる写真、食事で避けがちな食材や飲み物の摂り方、夜間の鼻詰まりやいびきの有無、ご家族の歯並びなどを伝えていただくと確認の手がかりになります。一緒に根本的な問題を解決していきましょう。


食事指導・機能訓練・小児矯正はどう役割が分かれる?


お子さんのお口の状態によって、歯科で行う対応の役割は大きく3つに分かれます。


対応の種類主な目的と役割費用・保険適用の目安
食事・生活習慣の指導よく噛む環境や姿勢、飲み物の摂り方など生活の土台を整える条件により保険診療または自由診療
口腔筋機能療法(MFT)舌や唇の位置・呼吸・飲み込み方の癖を練習で整える2条件により保険診療または自由診療
小児矯正(一期治療)装置を用いて顎の成長や歯が並ぶスペースに働きかける2自由診療

※じっさいの費用は、歯医者さんや使う装置によってちがいます。一般的には、診察のあとで装置や進め方が決まってから、費用が示されます。


小児矯正は、顎変形症など一部の病気を除き、公的な医療保険が使えない自由診療です。保険診療はむし歯などを治すためのもので、使える材料や手順が決まっています。自由診療は、歯並びや噛み合わせを整えるために、装置や通院の計画を一人ひとりに合わせて考えます。


また、矯正装置を着けた後や、ワイヤーを調整・交換した後は、歯に力がかかって数日から10日ほど違和感や痛みが出ることがあります5。どれが必要になるかは年齢や歯並び、口呼吸・舌の癖の有無で変わるため、通院頻度や家庭での練習負担も含めて歯科医師にご確認ください2。


よくある質問


Q. 口腔機能発達不全症とは何ですか?どのように診断されますか?


A. 「食べる」「話す」「息をするのを助ける」といったお口の働きが、年れいに見合うほど育っていない状態をいいます6。歯科医院では、かむ・飲みこむ様子や発音、口で息をしていないか、舌や唇の動き、歯並びやあごの育ちなど、いくつもの点を見てあわせて判断します。気になる様子があれば歯科医師にご相談ください。


Q. 生まれつき大人の歯が足りない「先天性欠如」は、どのくらいの子どもにみられますか?


A. 割合は調べた地域や年れい、調べ方によって数字が変わるため、ひとつの数字では言いきれません。ただ、永久歯が生まれつき少ないことは、歯科では珍しくない変化として知られています。


乳歯の下で永久歯が育っているかどうかは見た目では分からないため、生え替わり期に歯科医院でレントゲン検査を受けて確認することが大切です。欠如が見つかった場合も、顎の成長や噛み合わせを見ながら、乳歯をできるだけ長く使う方法などを考えていきます。


Q. 3歳の子どもの歯並びが気になる場合、もう矯正治療を始める必要がありますか?


A. 3歳頃の乳歯列期では、すぐに装置を使った矯正を始めるケースは限られており、まずは指しゃぶりや口呼吸、食べ方といった日常の習慣やむし歯予防を確認しながら経過を見守ることが多くあります。ただし、下の前歯が上の前歯より前に出ている(受け口)など噛み合わせによっては早めの相談が役立つこともあるため、健診などで気になった時点で一度歯科医院へご相談ください。


Q. 子どもの床矯正(拡大床)で後悔しないために、事前に確認すべきことは何ですか?


A. 取り外し式の装置(拡大床など)は、決められた時間きちんと着けられるか、毎日のお手入れを親子で続けられるかで結果が変わります。また、あごの幅を広げるだけで足りる歯並びか、舌の癖や口呼吸への訓練もいっしょに必要かを、診断で見きわめることが欠かせません。始める前に、装置が合うかどうか、通う回数、総額にふくまれる費用の範囲を歯科医師によく確かめましょう。


参考文献


1. 歯みがき い・ろ・は クイズで学ぼう!歯の基礎知識|「歯の学校」 WEBで学ぶ、歯と口の健康。|日本歯科医師会. https://www.jda.or.jp/hanogakko/vol76/iroha.html

2. Koletsi D, Makou M, Pandis N. Effect of orthodontic management and orofacial muscle training protocols on the correction of myofunctional and myoskeletal problems in developing dentition. A systematic review and meta-analysis. Orthodontics & craniofacial research. 2018. PMID: 30152171 / DOI: 10.1111/ocr.12240

3. Thijs Z, Bruneel L, De Pauw G et al. Oral Myofunctional and Articulation Disorders in Children with Malocclusions: A Systematic Review. Folia phoniatrica et logopaedica : official organ of the International Association of Logopedics and Phoniatrics (IALP). 2022. PMID: 34107494 / DOI: 10.1159/000516414

4. 歯科医療の現場から お口の健康と全身の健康の関係|お口と全身の健康を学べるWebマガジン|日本歯科医師会. https://www.jda.or.jp/happysmile/vol30/shikai/

5. 矯正歯科治療に伴うリスクや副作用について|神奈川歯科大学附属病院. https://www.kdu.ac.jp/hospital/department/dental/orthodontic/orthodontic02.html

6. 日本小児歯科学会 | 口腔機能発達不全の治療に関する重要なお知らせ~口腔機能を育てる治療と矯正治療との関係について~. https://www.jspd.or.jp/recommendation/article26/


都築 秀幸

医師


つづき歯科

院長

都築 秀幸

▶ 監修者プロフィール

経歴
2011年 日本歯科大学新潟生命歯学部 卒業
2011年 愛知学院大学歯学部附属病院 総合診療科
2012年 名古屋市内歯科医院 勤務
2018年 つづき歯科医院 常勤
2019年 つづき歯科 開業
資格・所属学会
【所属学会】
・日本ヘルスケア歯科学会
・JSPP(全国小児歯科開業医会)
・公益社団法人日本糖尿病協会
・日本小児矯正研究会
・日本顕微鏡歯科学会
・日本口育協会
【資格】
・インビザラインドクター
・日本糖尿病協会登録歯科医
・口育士