
指しゃぶりが続くときの歯並びの変化と相談の目安
指しゃぶりが長く続くと、上と下の前歯が閉じないすき間(開咬)や、上の前歯が前に出る変化が起こりやすくなります。影響は回数よりも、吸う時間や力、続いた長さの積み重ねで変わるといわれています。
この記事では、家庭で見ておきたいサイン、やめた後の変化、相談の目安、歯科で確認することを順に整理します。相談することと治療を始めることは別です。まずは今の状態を知るところから考えてみてください。
この記事の要点まとめ
- 吸う時間や力、続く長さが大きいと、開咬や上の前歯が前に出るようすがみられることがあります。
- くせが落ち着いた後の変わり方には人によって差があり、舌のくせや口呼吸もあわせてみていきます。
- 前歯のすき間などが気になるときは歯科に相談し、お口のようすに合わせた対応を考えます。
指しゃぶりが治らないと歯並びはどう変わる?吸う力や時間との関係は?

影響は回数よりも、吸う時間の長さ・力の強さ・どれくらい続くかで変わりやすいといわれます。よく見られるのは、前歯のすき間(開咬)と、上の前歯が前に出ること(出っ歯)です。ただし歯の並び方は遺伝や骨格ともかかわるため、指しゃぶりだけが原因とは限りません。
吸う時間・頻度・力・指の種類で歯並びへの影響が変わる理由
指をくわえている間、前歯には内側から外へ押す力がかかり、上あごは頬の力で内側へすぼまりやすくなります。寝つきから眠っている間まで続く吸い方は、この力がかかる時間を長くします。強く吸う癖や、親指を上の前歯の裏に当てる吸い方は、前歯を押す力を強めます。
指しゃぶりが長く続くと、開咬(奥歯をかんでも前歯が閉じない状態)につながることがあります。
仕上げ磨きのときに見たい前歯の隙間・突出・かみ合わせのサイン
家庭では次の点を見ておくと、相談のときに伝えやすくなります。
- 奥歯をかんでも、上下の前歯の間に隙間がある
- 上の前歯が前に出ている、横から見ると口元が出ている
- よく吸う指にタコ(吸いだこ)がある
当院では、指しゃぶりが続くお子さんの親御さんに、1日の中で吸う時間や回数、どんな場面でしているかを観察して記録していただいています。寝ついた後も吸っているか一度のぞいてみると、時間の長さがつかめます。
指しゃぶり以外に呼吸・姿勢・舌の癖も確認する理由
当院では、口で息をすること(口呼吸)、姿勢のくずれ、舌で歯を押し出すくせ、口まわりの筋肉の育ちが足りないことを、歯並びを左右する生活の中の要因としてあげています。舌のよい位置は、上の前歯のつけ根の少し手前に軽くふれている状態です。口呼吸が続くと舌が下がって上あごが育ちにくくなり、出っ歯や、歯がでこぼこに生える原因になることがあります。
いつも口が開いている様子があれば、それも伝えたいサインです。
ポイント
前歯の隙間は、指しゃぶりの時間や力に、口呼吸や舌の癖が重なって起こることがあります。
指しゃぶりをやめれば歯並びは戻る?永久歯への影響と家庭での向き合い方は?
乳歯の時期にくせが落ち着けば、前歯のすき間が変わっていくこともあります。一方、舌のくせや口呼吸が残ると、すき間が続くことがあります。
やめた後に前歯の隙間が変化しやすい場合と残りやすい場合
永久歯の歯並びができていく時期まで指しゃぶりが続くと、かみ合わせのずれにつながることがあるとされています1。やめた後も、飲み込むときに舌を前に出す癖や口呼吸があると、舌が隙間を押して、閉じにくくなることがあります。
自然に閉じるかどうかは家庭では見分けにくいため、歯科で経過を確認してもらいましょう。当院では、指しゃぶりによる歯並びの変化は基本的に3〜4歳まで経過観察とし、必要に応じて4歳ぐらいからMFT(口まわりの筋肉や舌のトレーニング)や矯正などを検討します。
原因や癖への対応は子どものペースで考える
当院では、歯並びが悪くなる原因や癖の改善を、お子さんのペースで進める口のトレーニングとして取り入れています。
指しゃぶりは、気持ちを落ち着ける手段にもなっています。急に取り上げるより、本人が「なぜやめるのか」を分かったうえで取り組むほうが続けやすくなります。
寝つきの指しゃぶりと家族でそろえたい叱らない声かけ
下の子が生まれた後など、気持ちが揺れる時期に指しゃぶりが増えることがあります。寝る前に手をつなぐ、絵本を読むなど、手を使う時間をつくると取り組みやすくなります。
当院では「やめなさい」と否定するのではなく、「手をつないで寝ようか」「指が痛くなっちゃうから、お人形をぎゅっとして寝ようか」と、指しゃぶり以外の行動を提案する言い方で声をかけるようお伝えしています。吸っていない時間に気づいたらほめることも含め、パートナーや祖父母と「注意しない・責めない」方針をそろえておくと、お子さんが追い詰められにくくなります。
何歳でどんな状態なら歯科に相談したほうがいい?
年齢だけで決める必要はありません。前歯の隙間や突出が見える、眠っている間も長く吸っているといった様子があれば、年齢にかかわらず相談してかまいません。相談することと、訓練や装置を始めることは別です。
指しゃぶりの相談時期とMFTの対象年齢は分けて考える
4歳をすぎても指しゃぶりをよくしているときは、小児科や小児歯科、心の専門家が力を合わせて、しっかり向き合うことがすすめられています2。一方、当院のMFTの紹介では、対象の年齢を5〜10歳として案内しています。
これは「4歳では相談できない」「5歳になったらすぐ始める」という意味ではありません。4歳で前歯の隙間が気になる段階でも、今の状態を確かめる相談はできます。
当院では4歳で指しゃぶりが続くお子さんの場合、まず生活の中で吸う場面を振り返り、家庭で取り組めることから提案します。たとえば指にキャラクターの絆創膏を貼る、手遊びを増やす、「ゆびたこ」の絵本を読み聞かせる、といった方法です。
経過観察・生活面の支援・MFT・歯並びを動かす治療はどう分かれるか
| お口や習慣の様子 | 考えられる対応 |
|---|---|
| サインが軽く、習慣が減ってきている | 経過観察 |
| 寝つきなど決まった場面で続いている | 声かけや生活リズムの見直し |
| 舌の癖や口呼吸など、口の使い方に課題がある | MFTなどの訓練 |
| 歯並びやあごの形の変化が大きい | 歯並びを動かす装置での治療 |
実際には、いくつかが重なることもあります。どの対応を選ぶかは、診察で状態を確かめたうえで判断します。
相談するとすぐ矯正治療が始まる?歯科では何を確認するの?
相談した日に治療が決まるわけではありません。まず歯並びと口の機能を確かめ、説明を聞いて納得してから方針を考えます。
歯科では歯並びに加えて食べ方・話し方・口の機能を確認する
当院では、食べる機能や話す機能などの問診、顔やお口まわりの写真撮影、舌圧検査(舌の押す力を測る検査)、口唇閉鎖力検査(唇を閉じる力を測る検査)で状態を調べます。一般的には、どの検査を行うかはお子さんの状態に合わせて決めます。前歯の見た目だけでなくお口全体の使い方を見ると、隙間の背景がつかみやすくなります。
初診では話を聴き治療内容を説明してから開始する
当院では初診時、治療の前にカウンセリングルームでお話を伺い、治療内容を説明して、十分にご納得いただいてから治療を始めます。指しゃぶりの相談では、親御さんの困りごとと、1日の中で吸う時間・回数・場面を伺い、お口の中を見てから今後の進め方をお伝えします。
MFTではどのような道具を使い誰と練習するのか
当院のMFTでは、トレーニングブックや、プレオルソ・T4Kというマウスピースを使い、歯科衛生士と一緒に練習します。練習には、キッズスペースを併設したファミリールームも使います。どの道具が合うか、始める条件はどうかは、診察で確認します。
方針を決める前に確かめたい費用・通院・家庭での練習
費用や通う間かく、家での練習の量は、お子さんの状態ややり方によって変わります。装置を使う子どもの治療の多くは、健康保険が使えない自費の治療です。保険の治療とは、使える装置や通い方の決め方がちがいます。
治療にかかる期間や通う回数、費用の合計は、お子さんの状態や使う装置によって大きく異なります。マウスピース型の装置(プレオルソ・T4Kなど)を使う訓練と、拡大装置やワイヤーなどであごの育ちや歯並びを整える第1期治療とでも、期間や費用は変わります。
当院の料金は、公式サイトの小児矯正のページに載せています。たとえばプレオルソ(MFT)は55,000円(装置の交換は11,000円)、拡大装置・リンガルアーチなどは220,000〜440,000円です(いずれも税込)。
主なリスク・副作用として、装置をつけた後しばらくは、違和感や不快感、痛みが出ることがあります。多くは数日から1〜2週間ほどで慣れていきます3。
吸う場面と時間の記録を持って、気軽にご相談ください。当院は名鉄三河線土橋駅の北口から徒歩7分で、駐車場もあります。
よくある質問
Q. 苦いお薬や手袋を使ってやめさせてもいいですか?
A. 当院でも、家庭で取り組める方法のひとつとして、苦いお薬を塗る、手袋をするといった提案をすることがあります。ただ、お子さんが強く嫌がるときは無理に続けず、手遊びや声かけを中心に切り替えましょう。どの方法が合うかはお子さんによって違うため、相談の際にお伝えください。
Q. 指しゃぶりで歯並びが整うことはありますか?
A. 指しゃぶりやおしゃぶりの習慣は、上下の前歯の間にすき間ができる開咬のなりやすさとかかわっています4。歯並びを整える方向には働きにくいため、長く続いている場合は一度お口の状態を確かめておくと、今後の見通しを立てやすくなります。
Q. 歯並びが気になるのは、育て方のせいでしょうか?
A. 歯の並び方には遺伝や骨格なども関わるため、家庭の習慣だけが原因とはいえません。ただ、リスクになる習慣もあるので、一度見直してみるとよいとお伝えしています。
Q. 鼻が詰まって口を開けて寝ている場合は、どこに相談すればいいですか?
A. 鼻の病気があるときは、まず耳鼻科で相談するようお伝えしています。必要なときは紹介状も書きます。鼻のようすを見てもらったうえで、歯並びや口の使い方を歯科でみていきます。
参考文献
1. Sadoun C, Templier L, Alloul L et al. Effects of non-nutritive sucking habits on malocclusions: a systematic review. The Journal of clinical pediatric dentistry. 2024. PMID: 38548628 / DOI: 10.22514/jocpd.2024.029
2. 日本小児歯科学会 | 3歳ごろから就学前まで. https://www.jspd.or.jp/question/until_school/
3. 矯正歯科|診療科|診療科・部門|日本歯科大学附属病院. https://www.tky.ndu.ac.jp/hospital/departments/section/orthodontics.html
4. Gao C, Wang M, He H et al. Association between Non-nutritive sucking habits and Anterior open bite: A systematic review and meta-analysis. BMC oral health. 2025. PMID: 40619361 / DOI: 10.1186/s12903-025-06040-z
5. Borrie FR, Bearn DR, Innes NP et al. Interventions for the cessation of non-nutritive sucking habits in children. The Cochrane database of systematic reviews. 2015. PMID: 25825863 / DOI: 10.1002/14651858.CD008694.pub2
6. 東京女子医科大学病院 歯科口腔外科. https://hosp.twmu.ac.jp/departments/dentistry.html
2011年 愛知学院大学歯学部附属病院 総合診療科
2012年 名古屋市内歯科医院 勤務
2018年 つづき歯科医院 常勤
2019年 つづき歯科 開業
・日本ヘルスケア歯科学会
・JSPP(全国小児歯科開業医会)
・公益社団法人日本糖尿病協会
・日本小児矯正研究会
・日本顕微鏡歯科学会
・日本口育協会
【資格】
・インビザラインドクター
・日本糖尿病協会登録歯科医
・口育士
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